性別 男性
イニシャル C.F.さん
引きこもりになった時の年齢 30歳
引きこもりを脱した時の年齢 32歳

長男の引きこもりの経験を親の立場から語ってみたいと思います。

長男は大学を2年で中退してから10年ぐらいは老舗のお菓子メーカーでアルバイトをし、自分の生活費を稼いでいましたが、あることがきっかけで一切外に出なくなり、自分の部屋でほとんど過ごすようになってしまいました。

それでもしばらくの間は夜、近くの公園にジョギングに出ていたようですが、その内にそれも止めてしまい、昼寝て夜起きて何かをしているという、いわゆる昼夜逆転の生活がずっと続いたのです。

引きこもりの原因

長男を襲ったある出来事とは、高校時代に親しかった友人との再会でした。その友人は、高校時代から自動車関係の技術者になる夢を持っていて、そのことを長男によく語っていたと聞いたことがありました。

彼は工業大学を卒業し、大阪に本社を置くある自動車メーカーの設計担当の技術者となっていたのです。同じ高校の友人が自らの夢を適えているのに対し、自分はこの年になってもまだ正職にも就かずフラフラしている、友人と何と違うことか。

長男は繊細な神経の持ち主で、そのことがよほどショックだったのか、その日を境に外に出なくなってしまいました。

長男の苦悩

一切外に出なくなった長男、救いは母親が作った食事はしっかり食べるし、両親に対し暴力を振るうことがなかったことです。しかし、やはりいらいらすることは有ったようで、壁数箇所に穴が開いていました。

生活費はほとんどかかりませんが、国民年金や国民健康保険の掛け金が毎月あり、律儀な長男はしばらくの間は、以前していたアルバイトで貯めたお金をそれに充てていたようでした。しかし、それも底をつき始めてあせっている様子が伝わって来ました。

何とかしなければともがいても、もう1年以上もほとんど外に出ておらず、中々出られないようでした。

もちろん、その間我々両親も黙っていた訳ではありません。機会を見ては長男に語りかけるようにはしましたが、大体は直ぐに篭ってしまいました。

長男が動いた

そうして2年近く経過したある時、元々苦しかった自分達の生活費がギリギリで大変なことを、機会を見て思い切って長男に打ち明けました。

その時長男は部屋に篭らず黙って聞いてくれていました。それから数日が経って長男が珍しく昼に外出したので、どうしたのだろうと思っていました。

その翌日、長男が昨日ある自動車会社の期間従業員の面接に行って来たこと、多分OKなこと、その自動車会社の三重の工場で働くことになるだろうと言ったのです。

えー本当、びっくりするやら嬉しいやら、私は思わず涙を流してしまいました。長男が動いてくれた、それまでほとんど反応してくれなかったのに、話すべきかどうか迷った末の私の話に同情してくれたのだと思います。

その後の長男

それから長男は会社こそ変わりましたが、その後ずっと自動車製造の仕事を続け、短い時は1か月に一回、長くても3か月に一回はお土産を持って家に帰って来ます。

その時生活費の足しにと言って私に数万円のお金を渡してくれます。妻にもお小遣いをいくらか渡しているようです。本当にありがたくていつも手を合わせています。

繊細で寡黙な長男はあまり多くは語りませんが、働きながら何かの資格を取得すべく勉強しているようでした。あの時親として情けないと思いながらも思い切って打ち明けて良かった、あれが長男を外に出すきっかけになったのですから。