性別 男性
イニシャル K.S さん
引きこもりになった時の年齢 12歳
引きこもりを脱した時の年齢 13歳
引きこもりしていた期間 1年

私が家に閉じこもり、学校に行くことはおろか外にも出なくなったのは中学生の時でした。

その時には家族との会話も最小限にし、ひとり部屋にこもり過ごしていました。

将来はもちろん明日のことさえ考えられませんでした。ただテレビ、ラジオだけが唯一の社会との接点でした。

それから十数年がたち、今では社会の中で暮らしています。そんな引きこもりの時代のお話をします。

私が引きこもりになったきっかけ

私が育った家庭は少し裕福だったのかもしれません。食べる苦労などしたことがなく欲しい物は買い与えられていました。ただ、両親の職業柄一人で過ごすことが多かったのです。

そんな家庭に大きな変化が起こりました。父親の事業が傾きそれまで住んでいた家からアパートへ引越し、中学校も転校しました。転校した中学校ではイジメにあいました。その理由は太っていることでした。

それが嫌で学校を休みがちになり、さらにそれが原因でいじめられる悪循環でした。ただその当時の私にははっきりと理解できなかったのですが、事業に失敗した父親の背中が妙に寂しく小さく感じていました。

恐らくいじめと父親の姿から感じる絶望感に似た感情が人と接したくない行動になったように思えます。

テレビとラジオで過ごす引きこもり生活

転校してから三週間ほどで学校にいかず、部屋に閉じこもるようになりました。

昼はテレビを見て、夜はラジオを聴いて暮らしていましたが、笑いもせず怒ることもなく、ただ見て聴いているだけでした。先生の助けがあり、何度か登校しましたが、それも長続きはしませんでした。

両親はその理由が怠け癖がついた、見たいテレビがあるから学校へ行かない、などこちらの心とは的外れなことを想像していたようです。そんな引きこもりの生活が半年ほど続きました。

突然、土に触れたくなり両親を離れ田舎へ

テレビ、ラジオで過ごすなか、突然、土が触りたくなりました。手にとって固めたり、地面に穴を掘ったりなどを想像すると、心が少し晴れやかになるような気がしたのです。しかし部屋を出て公園に行くことができませんでした。

そんなある日によい方法を思いつきました。それは父親の実家へ帰ることです。小学校低学年の頃に一度帰ったことがあり、自然に恵まれた環境で土を触ることができるのを覚えていました。

両親に相談しても最初は反対するばかりでした。両親がいっしょに帰ることができないことや年老いた祖母のことを考えると当然のことと思います。しかし最後には部屋に閉じこもる私を見て決断してくれました。

南の島で太陽を浴びながら引きこもりを脱する

田舎は南の離れ島にあります。町内はみな親戚のような感じです。田舎の中学校に転校した最初の頃に多少のイジメがありましたが、名字を呼ぶのではなく下の名前を呼びあう親戚のような関係の中では苦にはなりませんでした。

そこでは島内を自転車で一周したり、イカダを手作りしたり、田舎の中学生が過ごすような生活を送ることができました。そして念願だった土いじりも庭先で穴を掘り返したりして実現できました。

南の太陽を浴びている自分には部屋に引きこもっていた自分が不思議な感じがしました。

引きこもり時代から数十年がたち思うこと

引きこもりの原因は人それぞれにあると思います。私の場合は家庭環境が変化したことといじめだったのでしょう。

土が触りたい衝動になったのは未だにわかりませんが、「箱庭療法」というものが世の中にあるので、無意識に精神や体が土を欲していたのかもしれません。私の場合は田舎へ行ったことが、引きこもりを脱するきっかけになりましたが、恐らくよい環境と両親の元を離れ自立した生活を送ったのがよかったのではと思っています。